バカにされる派遣社員 法改正前の派遣はプロ中のプロだけだった

仕事

婚活をしていた頃、「派遣の人はだらしない」とか「派遣なんかじゃ結婚できない」と言う言葉を、よく耳にしました。いつの頃からか、派遣は正社員になれない人が仕方なくするもの、いうイメージが定着してしまいました。今は大学を出たばかりの社会人経験のない人も「派遣」として働くことができます。
ン十年前から派遣で仕事をしていた私にとって「派遣の価値」は、180度変わってしまったとしか言えません。

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派遣がプロフェッショナルだった頃

1999年に派遣法が改正される前までは、派遣の仕事は専門職のみでした。今のように、特別なスキルを必要とせず、誰でもできるような事務仕事などはありませんでした。派遣スタッフして登録できるのは、十分な経験のある人のみで、プロ中のプロと言える人ばかりでした。今のように、新卒の未経験者が「派遣スタッフ」になるなど考えられない時代で、社員よりもスキルが高いのは当たり前、時には、正社員の方々に仕事を教えることもあったほどです。
当然、時間単価も高く、「派遣」は簡単になれるものではありませんでした。

派遣=専門知識を持った即戦力になる人 だったのです。

それがいつの間にか、見下されたりバカにされたりする存在になってしまったのは、当時の総理大臣小泉さんのせいです。彼が行なった派遣法の改正で、専門職以外の職種で派遣を可能にしたため、「未熟な派遣スタッフ」が量産されることになってしまいました。

派遣会社のスタッフ向け講座に、「ビジネスマナー講座」や「Office入門講座」があるのは、私には何だかびっくりなことです。以前は出来て当たり前だったからです。

即戦力が求められたのは、もう昔の話

もう10年以上前ですが、ある派遣会社で「派遣スタッフの教育をする仕事」をしていたことがあります。「派遣」を教育するために、専門の派遣会社から「派遣の講師」が派遣されると言う、当時の私には「妙な仕事」でした。
まだまだ、派遣の値崩れが起きる前で「良いギャラ」を貰えていた私は、小泉さんが行なった派遣法改正が、それまでの派遣にとって「改悪」だとは気づいていませんでした。

けれど、「派遣スタッフの教育」をする仕事で、彼女たちはExcelの関数はおろかパソコンの基本操作も怪しいケースがあると分かった時、ひっくり返りそうになりました。

スキルのない人がなぜ派遣になれるのだ?と。

今では、そんな人が当たり前になってしまった派遣。私が最後に派遣スタッフとして仕事をしたのはいつだっただろう?と思います。急に社員が辞めて、急遽対応しなければいけない案件をこなすために、超短期(スポット)で入ったソフトェア会社だったかもしれません。まるで機械のように黙々と仕事をこなした記憶があります。
超短期の仕事は、出来てなんぼ、出来て当たり前の仕事なので、プレッシャーも大きかったせいか、毎日ぐったり疲れ切っていたのを、今でも覚えています。それでも、2、3回その会社でスポットの仕事をしたと思います。

短期派遣の仕事ができない理由

今ではもう、すっかり「派遣スタッフ」として仕事をすることはなくなりました。以前のような短期の仕事が出来なくなったからです。

私は離婚してから生活が大変になり、いくつかの仕事を掛け持ちしています。すべて長期の雇用契約や請負業務契約で、その合間に試験監督などの1日から数日の超短期の仕事をしていました。
けれど、6年ほど前から日雇派遣が原則禁止になったので、それまでしていた短期の仕事に応募できなくなりました。
「派遣切り」が社会問題になった時に、日雇派遣で働く人の「不安定な雇用」が大きな問題になった結果、雇用側(派遣会社)が「働く人が働きやすい環境を作る」管理責任を果たしていないケースが多数という理由で、日雇派遣が原則禁止になったのです。
けれど、この日雇派遣原則禁止には例外があります。未だに私には納得がいかない例外ですが、日雇派遣で働けるのは以下の条件のどれかに当てはまる人です。

  • 60歳以上
  • 雇用保険の適用を受けない学生
  • 主たる業務の年収が500万以上で副業として仕事をする人
  • 世帯年収が500万以上で、主たる生計者でない

私はこれを読んだ時、なんじゃこりゃ?と思いました。
要は、生活が安定した人じゃないとダメ、と言うことです。

低収入お断り「日雇派遣原則禁止」

主たる収入となっている業務の年収が500万ある人や、世帯年収が500万あって生活のために働かなくてもいい人は仕事ができて、生活のために少しでも多く働きたい低所得者は仕事ができないと言うことです。

なぜ年収500万以上なの?と。正直、今の時代でひとつの勤務先からの年収が500万あるのは「良い収入」です。これが180万以上ならまだ理解できます。低収入で仕事を掛け持ちしている人や、月給15万と言う人はいくらでもいます。そんな人たちが(私を含め)少しでも仕事を掛け持ちして、収入を増やしたいと思うのに、その機会は「良い収入」の人にしか与えられないのです。

直接雇用の仕事ならば、この日雇派遣原則禁止はひっかからないので問題ありませんが、私がそれまでやっていた短期の仕事は直接雇用のものではなかったので全滅でした。

どこかに、日雇派遣の仕事は「お小遣いを稼ぎたい主婦にはいい仕事」と書かれていて、もやっとした気分になりました。扶養控除額の拡大がされたり、「サラリーマンの妻」ばかりが、なぜこんなに優遇されるのか?と。
年金だって払わなくても満額もらえて、お小遣い稼ぎもできて、夫は税金を優遇されて……。

こんなことを愚痴っていても仕方ないのですが、結局のところ、日本社会は「お金持ち」と「余裕のある主婦」が恩恵を受けられる仕組みなのでしょう。

専門職としてまっとうな扱いを受けていた時代の派遣が懐かしく思います。今も、高度な専門知識があれば昔の派遣のように働けるのかもしれませんが、その点で私は時代に乗り遅れてしまった気がします。
途中で、違う分野の仕事に挑戦したり、結婚・離婚でそれまでの実績がリセットされたことが原因ですが、今さら嘆いても仕方ありません。諦めずに勉強してスキルを上げるのみです。

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Posted by Hana